公開日
2026.2.20
更新日
2026.2.20
総合診療
腎機能の低下を指摘されたら?まず整える「3つの優先順位」

こんにちは!リベ大総合クリニック大阪院 院長の大岩です。
前回コラム「eGFRが低い・クレアチニンが高い=腎臓病?受診の目安を解説」では、CKD(慢性腎臓病)の定義もあわせて解説しました。
今回は、その続きです。
🌀 CKDって言われたけど、結局何をすればいいの?
🌀 食事制限とか運動とか、やることが多すぎてわからない…
🌀 とりあえず水をたくさん飲めばいい?
分かります。
ネットで調べても情報が多すぎて、何から手をつけていいか迷いますよね。
でも、大丈夫。いきなり全部はできません。
今日は、「まずこれだけは!」という優先事項を、3つに絞ってお伝えします!
🔸大切な考え方:腎臓は「元に戻す」より「守る」
腎機能って、頑張れば元に戻ると思いますか?
正直にお伝えすると、一度低下した腎機能を「完全に元に戻す」のは、基本的に難しいです。
でも、落ち込まないでください。
「腎機能低下の進行を遅らせる」ことは、十分に可能なんです。
そのためにも大切なのが、今回お伝えする「3つの優先順位」です。
あれもこれもと手を広げすぎると、続きません。
まずは次の3つを確実に押さえましょう。
🔸最優先① 血圧を整える
血圧と腎臓は「お互い影響し合う関係」
血圧と腎臓は、ものすごく密接な関係があるんです。

高血圧が続くと、腎臓の細い血管がダメージを受けて、腎機能が悪化します。
また、腎機能が悪くなると、血圧が上がりやすくなります。
つまり、悪循環が起きやすいんですね。
さらに、CKDの方は心臓や血管の病気(心筋梗塞や脳卒中など)のリスクも高いことがわかっています。
血圧を整えることは、腎臓と心臓、両方を守ることにつながるんです。
血圧の目標値
国際的には「上の血圧120mmHg未満」という低い目標値も示されていますが、体調や年齢による個別の調整が必要です。
日本の新しいガイドライン(2025年改訂)では、原則として年齢を問わず「130/80mmHg未満」が目標とされました。
もちろん個人差がありますので、まずは主治医と相談し、「あなたに合った目標値」を決めることが大切です。
🔸最優先② 血糖を整える
透析の原因1位は糖尿病
腎臓にとって糖尿病は「最大の敵」とも言える深い関係があります。
実は、日本で透析治療を始める原因として最も多いのが糖尿病です。
血糖値が高い状態が長く続くと、腎臓の細い血管が少しずつ傷つき、「糖尿病性腎症」という状態に進むことがあります。
だから、血糖値をコントロールすることは、「将来の透析を防ぐこと」につながります。
血糖管理のポイント
高血糖を防ぐのと同じくらい、低血糖にも注意が必要です。
腎機能が落ちていると、薬が効きすぎてしまうことがあるため、一人ひとりに合わせた「安全な量」の調整が大切なんです。
また最近は、血糖を下げながら腎臓も守ってくれる「SGLT2阻害薬」という種類の薬が選択されることが増えています。
腎臓の状態によっては使用できないこともあるため、まずは主治医に相談しましょう。
🔸最優先③ 薬を見直す
薬の管理が腎臓を守る
「薬の管理」も、腎臓を守るために大切です。
腎臓は、体の中の老廃物や薬を尿として外に出す役割をしています。
腎臓が弱っていると、普段は何でもない薬が体に残りやすくなり、負担になってしまいます。
【薬管理のポイント!】
✅️ 腎臓に負担をかける薬(腎毒性のある薬)を避ける
✅️ 薬が効きすぎないように量を調整する
✅️ 体調不良時に一時的に薬を調整する
「この薬、続けて大丈夫かな?」と不安に思ったら、ぜひお気軽にご相談くださいね。
注意が必要な薬
腎機能が低下している方が注意すべきお薬・検査について、分かりやすく表にまとめました。
種類 | 具体例 | 注意が必要な理由 | 対策 |
|---|---|---|---|
NSAIDs(痛み止め) | ・ロキソニン | 腎臓への血流を減らす作用があり、腎機能が悪化するリスクがある | アセトアミノフェン(カロナールなど)の方が負担が少ないとされている |
サプリメント・漢方薬 | ・一部の健康食品 | 中には腎臓に障害を起こす成分や、カリウムが多く含まれているものがある | 自己判断での服用は避ける |
🌀血圧の薬は、腎臓に負担をかけないの?
安心してください。
むしろ、血圧の薬は腎臓を守るために処方されることが多いです。
特に「ACE阻害薬」や「ARB」という種類のお薬は、腎臓の糸球体(ろ過装置)にかかる圧力を下げて、腎機能を長持ちさせてくれる働きがあります。
血圧の薬を使い始めに検査数値(クレアチニン)が少し上がることがありますが、これは「薬が効いているサイン」です。
定期的に血液検査を行いながら調整しますので、自己判断で中止せず、主治医と相談しながら続けてください。
🔸よくある誤解
Q:水をたくさん飲めば腎臓が良くなるって聞いたけど…
これ、状況によっては危険なんです。
確かに、「脱水」は腎臓に悪いですが、だからといって「飲めば飲むほど良い」わけではありません。
腎機能が低下している場合、水分をうまく排出できず、むくみが出たり、心臓に負担がかかったりするリスクがあります。
自己判断でガブ飲みせず、「今の自分にはどれくらいの水が必要か」を主治医に確認しましょう。
Q:たんぱく質は摂らない方がいいの?
極端な制限は、かえって体を弱らせてしまいます。
確かに、腎臓の機能がかなり低下している場合は制限が必要ですが、元気なうちから減らしすぎるのは危険です。
たんぱく質不足で筋肉が落ちると、足腰が弱り、転倒や寝たきりの原因(サルコペニア)になることもあります。
特に高齢の方は、「腎臓を守りつつ、筋肉も落とさない」という絶妙なバランスが必要ですので、必ず主治医や管理栄養士に相談してください。
🔸定期的なチェックを忘れずに
最後に、定期的な検査についてお伝えしますね。
CKD(慢性腎臓病)は「一度検査したら終わり」ではありません。
症状が出にくい病気だからこそ、定期的に数字(腎機能や尿の状態)をチェックして、「今の状態」を正しく把握し続けることが何よりも大切です。
【最低限チェックすべき項目】

検査の頻度は状態によって変わりますが、3〜6か月に1回を目安にチェックしましょう。
🔸やることを「絞る」から続けられる
食事制限や運動、禁煙など…やった方がいいことは山ほどありますが、全部一度に頑張ろうとすると、どうしても息切れしてしまいます。
だからこそ、まずは「血圧」「血糖」「お薬」から優先的にアプローチしましょう。

この3つを確実に押さえ、その上で次のステップへ進めばいいのです。
当院では、血圧・血糖・お薬の調整から、検査スケジュールの管理まで、あなたと一緒に「腎臓を守る作戦」を立てていきます。
「何から始めればいいか分からない」という方も、まずはこの3つの優先順位だけ頭の片隅に置いてみてくださいね。
みなさまが、少しでも「ご機嫌な毎日」を過ごせますように。
では、次回のコラムもお楽しみに!
▼関連コラム
eGFRが低い・クレアチニンが高い=腎臓病?受診の目安を解説
【参考文献】
Dasgupta I, Zoccali C. Is the KDIGO Systolic Blood Pressure Target <120 mm Hg for Chronic Kidney Disease Appropriate in Routine Clinical Practice?. Hypertension, 2022, 79巻, 1号, p.4-11
日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン
糖尿病診療ガイドライン 2024 9章 糖尿病性腎症