公開日
2026.5.23
更新日
2026.5.22
総合診療
動悸・汗・体重減少…甲状腺機能亢進症のサインとは?【前編】

こんにちは!リベ大総合クリニック大阪院 院長の大岩です。
🌀 最近、安静にしてるのに心臓がドキドキする
🌀 食べているのにどんどん痩せていく…
🌀 周りは寒そうなのに、自分だけ暑く感じて汗をかく
こんな症状、思い当たりませんか? 実はその不調は、甲状腺が「アクセル全開」の状態になっているサインかもしれません。
前回のコラムでは、「疲れやすい・寒がり・便秘」などの症状がみられる「甲状腺機能低下症」についてお話ししました。今回はその反対に、甲状腺が働きすぎてしまう「甲状腺機能亢進症」について、前編・後編に分けて解説します。
前編では、現れやすい症状や主な原因、さらに高齢者では症状の出方が異なることについて、わかりやすくお伝えします。
🔸 甲状腺機能亢進症とは?
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、体の働きが必要以上に活発になってしまう病気です。
前回のコラムでお話ししたように、甲状腺ホルモンは体全体の「アクセルペダル」のような役割を持っています。甲状腺機能亢進症は、いわばアクセルを踏みっぱなしにしているような状態です。
では実際に、どのような症状が現れるのか見ていきましょう。
🔸 甲状腺機能亢進症の症状
甲状腺機能亢進症は、全身にさまざまな症状が現れる病気です。ご自身に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。

前回ご紹介した甲状腺機能低下症と比べると、症状が“正反対”であることに気づく方も多いかもしれません。甲状腺機能低下症が「体にブレーキがかかった状態」だとすると、甲状腺機能亢進症は「アクセルを踏み続けている状態」に近いイメージです。
どちらも甲状腺ホルモンのバランスが崩れることで起こりますが、現れる症状には大きな違いがあります。
🔸 原因の多くは「バセドウ病」
バセドウ病(Graves病)は、自分の免疫が甲状腺を刺激し続けてしまう「自己免疫疾患」の一つです。 米国の調査では、甲状腺機能亢進症の有病率は約1.2%とされていて、その多くがバセドウ病によるものと報告されています。
本来、免疫は体を守る働きをしていますが、バセドウ病では免疫の異常によって、甲状腺が過剰に刺激されてしまいます。
その原因となるのが、「TRAb(TSH受容体抗体)」と呼ばれる特殊な抗体です。 TRAbが甲状腺に作用すると、脳からの指令とは関係なく「もっとホルモンを作って!」という信号が出続け、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されます。
バセドウ病は20〜50代に多く、女性は男性より5倍ほど発症しやすいとされています。
🔸 バセドウ病の3つのサイン

バセドウ病には、他の原因による甲状腺機能亢進症ではあまり見られない、特徴的な3つの症状があります。
① びまん性甲状腺腫(びまんせいこうじょうせんしゅ・首の腫れ)
甲状腺全体が均一に大きくなり、首の前側が少しふっくら見えるのが特徴です。 「最近、首まわりがきつくなった」「ネックレスが当たりやすくなった」といった変化をきっかけに気づく方もいます。
② バセドウ病眼症(目の症状)
バセドウ病の患者さんの約25〜50%に、次のような目の症状が現れるとされています。
目が出て見える(眼球突出)
まぶたの腫れ
目の奥の痛み
物が二重に見える
また、甲状腺ホルモンの値が改善しても、目の症状だけが進行することがあります。症状によっては眼科での治療や定期的な経過観察が必要です。
③ 前脛骨粘液水腫(ぜんけいこつねんえきすいしゅ・すねの皮膚変化)
すねの前側の皮膚が厚く硬くなり、オレンジの皮のような質感になることがあります。 バセドウ病に特徴的な症状の一つですが、みられる頻度は比較的少ないです。
🔸 甲状腺ホルモンが増えるその他の原因
甲状腺機能亢進症の原因は、バセドウ病だけではありません。他にも、次のような原因があります。
①中毒性多結節性甲状腺腫・中毒性腺腫
甲状腺の一部にできた「しこり」が、脳からの司令とは関係なく甲状腺ホルモンを作り続けるタイプです。比較的、高齢者に多くみられる原因とされています。
②破壊性甲状腺炎
甲状腺に炎症が起こり、内部に蓄えられていた甲状腺ホルモンが一時的に血液中へ漏れ出すことで起こります。
多くは一過性で、数週間〜数か月ほどで自然に落ち着くケースが一般的です。
🔸 高齢者は典型的な症状が目立ちにくい
高齢者では、動悸や手のふるえといった典型的な症状が目立たず、疲れやすさや食欲低下、体重減少、物忘れなどが前面に出ることがあります。
このような状態は、「無欲性(apathetic)甲状腺機能亢進症」と呼ばれています。

特に、次のような症状がみられることがあります。
◻︎ 疲労感・だるさ
◻︎ 食欲低下・体重減少
◻︎ 無気力・元気がない
◻︎ 物忘れ・ぼんやりする
これらは、認知症や老化、うつ症状と区別がつきにくく、「年のせい」と考えられて見逃されてしまうことも少なくありません。
そのため、高齢者で原因不明の体重減少や元気の低下がみられる場合は、血液検査(TSHなど)で甲状腺機能を確認することが大切です。
🔸 まとめ|まずはTSH検査を
動悸や汗の増加、体重減少などの症状が続いている場合、甲状腺機能亢進症が隠れている可能性があります。
「最近なんとなく調子が悪い」「年齢のせいかも」と感じている不調も、実は甲状腺ホルモンの異常が関係していることがあります。
気になる症状がある場合は、まず血液検査(TSH)で甲状腺の状態を確認することが大切です。
当院では、甲状腺ホルモン検査(TSH・FT3・FT4)や抗体検査(TRAb・TPOAb)を含む、内分泌疾患の診療に対応しています。
「もしかして自分も…?」と気になる方は、お気軽にご相談ください。
次回の後編では、「動悸の原因は心臓だけではない?」をテーマに、甲状腺機能亢進症と心房細動の関係、検査や治療について詳しく解説します。
では、次回のコラムもお楽しみに!
【参考文献】
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日本甲状腺学会. バセドウ病治療ガイドライン2019.