公開日
2026.5.17
更新日
2026.5.17
総合診療
その疲れ・寒がり・便秘、もしかして甲状腺機能低下症?

こんにちは!リベ大総合クリニック大阪院 院長の大岩です。
🌀 最近やたら疲れる…年齢のせいかな?
🌀 みんな暑いっていうのに、自分だけ寒い
🌀 便秘や肌の乾燥が気になる
こういった「なんとなくの不調」はありませんか?
疲れやすい、寒がり、便秘がち、肌のカサつき…。1つひとつはありふれた症状です。
ただ、いくつも重なり、なかなか良くならない場合は、甲状腺の働きが関係していることもあります。
今回のコラムでは、意外と見落とされやすい「甲状腺機能低下症」について、症状・原因・検査・治療までお伝えしていきます。
🔸 そもそも甲状腺って?

甲状腺は、のどぼとけのすぐ下にある、蝶が羽を広げたような形をした小さな臓器です。大きさは縦4〜5cm、重さは15〜20gほどしかありません。
しかし、甲状腺が作り出す「甲状腺ホルモン」は、身体のほぼすべての細胞に影響を与えます。甲状腺ホルモンは、代謝・体温・心臓の動き・腸の動き・脳の働きなど、身体のさまざまな機能をコントロールしているのです。
簡単に言うと、甲状腺ホルモンは身体全体の「アクセルペダル」のような役割を持っています。このアクセルの踏み込みが弱くなり、身体の機能がゆっくりになってしまう状態が「甲状腺機能低下症」です。
🔸 甲状腺機能低下症の症状
甲状腺機能低下症の症状はとても多彩で、どれも「ありふれた不調」に見えてしまいます。代表的な症状は、次の通りです。
◻︎ エネルギーの低下:疲れやすい、だるい、やる気が出ない
◻︎ 消化機能の低下:便秘がち、食事は変わらないのに体重が増える
◻︎ 体温調節の不調:寒がりになった、手足が冷たい
◻︎ 見た目の変化:肌や髪のカサつき、まぶたや顔のむくみ
◻︎ 爪のトラブル:爪がもろくなる、割れやすい
◻︎ 精神面の不調:気分が沈む、物忘れ、集中力の低下
◻︎ 健診で指摘される異常:コレステロールが高いと言われた
「全部当てはまる」という方もいれば「2〜3個は思い当たる」という方もいるかもしれません。1つの症状だけでは判断できませんが、複数が重なって何ヶ月も続いているなら、一度、甲状腺の検査を受けてみるといいでしょう。

更年期の不調と症状がよく似ている
甲状腺機能低下症の症状を見て「更年期と同じかな?」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
実は、更年期に起こりやすい不調と、甲状腺機能低下症の症状はとてもよく似ています。ヨーロッパ更年期・男性更年期学会(EMAS)の2024年の報告でも「更年期と甲状腺機能異常は症状が共通しており、鑑別が難しいことがある」と指摘されています。
「更年期だから仕方ない」と片付けてしまうと、甲状腺の問題を見逃してしまうかもしれません。更年期の治療をしているのに不調が良くならない方も、甲状腺の検査を受けてみてください。

🔸 甲状腺機能低下症の原因で多い「橋本病」
日本で最も多い甲状腺機能低下症の原因が「橋本病」と言われています。
橋本病は、自分の免疫が甲状腺を誤って攻撃してしまう「自己免疫疾患」です。免疫システムが甲状腺の組織を異物と勘違いすることで、じわじわと甲状腺の働きが弱っていきます。30〜50代の女性に多く発症し、女性は男性の数倍かかりやすいとされています。
🔸 甲状腺機能低下症の検査と治療
甲状腺機能低下症の検査と治療は、シンプルです。検査・治療の流れに沿って、ご紹介していきます。
血液検査でTSHとFT4をチェック
甲状腺の機能は、普通の血液検査で確認できます。最初に測るのは「TSH(甲状腺刺激ホルモン)」という値です。
TSHは脳から出るホルモンで、甲状腺に「もっとホルモンを作って!」と指令を送る存在です。甲状腺の働きが落ちると、身体はホルモンが足りないと判断して、TSHを大量に分泌します。つまり「TSHが高い=甲状腺の働きが落ちているサイン」といえるわけです。
TSHが正常範囲内(おおよそ0.4〜4.5 mIU/L)であれば、甲状腺機能低下症の可能性は低いと考えられます。
TSHが高い場合は「FT4(遊離サイロキシン)」という、実際に身体で働く甲状腺ホルモンの量を値を測ります。FT4の正常範囲内は、おおよそ0.70~1.48 ng/dLです。
TSTが少し高めと言われたら?
甲状腺の検査をすると「TSHはちょっと高いけれど、FT4は正常」と言われることがあります。これは潜在性甲状腺機能低下症と呼ばれる状態で、いわば甲状腺がサボり始めた段階です。実は意外と多く、特に高齢の方では珍しくないとされています。
TSHが10 mIU/L以上の場合は治療を始めることが多く、4.5〜10の場合は症状や抗体の有無、年齢を考慮して判断します。
一度の検査結果で焦る必要はありません。TSHは体調や時期で変動することもあるので、再検査で持続性を確認していきます。
ホルモンを補う治療をする
甲状腺機能低下症の治療の基本は、足りなくなった甲状腺ホルモンを補うことです。
レボチロキシン(商品名:チラーヂンS)という飲み薬を、毎日1回少量から始めて、定期的にTSHを測りながら量を調整していきます。数値が安定したあとは、数ヶ月〜年1回の定期検査でフォローします。
🌀「一生薬を飲み続けるの?」
そう気になる方もいらっしゃるかもしれません。
レボチロキシンは身体が作るホルモンと同じ成分なので、適切な量であれば副作用はほとんどないと言われています。不足した栄養素を補う「サプリメント」のような感覚で続けていただけます。
🔸 まとめ|気になる症状が続いたら検査を
甲状腺機能低下症の症状はありふれた不調に見えるため、年齢や更年期のせいだと思われて見逃されがちです。
🌀 疲れやすさが続いて、何だか身体が重い…
🌀 寒がりや便秘、肌の乾燥が気になる…
🌀 甲状腺機能低下症かも?
そんなときは、お気軽にご相談ください。
血液検査の結果をふまえて、一緒に次のステップを考えましょう。「なんとなくの不調」の正体がわかるだけで、気持ちがラクになることもあります。
少しでも参考にしていただければうれしいです。
では、次回のコラムもお楽しみに!
【参考文献】
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