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総合診療
犬・猫に噛まれたらどうする?|洗い方・受診目安・抗生物質の考え方

こんにちは!リベ大総合クリニック大阪院 院長の大岩です。
🌀 ちょっと噛まれただけだし、消毒しておけば平気だよね?
🌀 猫の噛み傷、穴は小さいのに…翌日になって腫れてきた
🌀 抗生物質ってもらった方がいいの?破傷風とか関係ある?
このように、動物に噛まれた際に、病院へ行くべきか迷った方も多いのではないでしょうか。
動物の口の中には、人に感染を起こす菌が多く含まれているとされており、特に猫に噛まれた時は、傷が小さく見えても注意が必要です。噛まれたあとに必要な対応は、傷の深さや場所、動物の種類、噛まれた方の持病によって変わります。
今回のコラムでは、まずやるべき応急処置から、受診の目安、抗生物質や破傷風ワクチンが必要かどうかまで、一緒に確認しましょう。
- 🔸 消毒より先に、流水と石けんで洗いましょう
- 🔸 猫の噛み傷は、小さく見えても要注意
- 穴が小さくても、中は深い
- 血が出たら当日中、翌日に腫れてきたら迷わず受診
- 🔸 犬に噛まれたとき|こんな場合は受診を
- 🔸 抗生物質(抗菌薬)は「全員」ではなく「必要な人」に
- 🔸 破傷風と狂犬病|ワクチンの記憶があいまいな方へ
- 破傷風:最後に打ったのが5年以上前なら相談を
- 狂犬病:国内のペットでは通常考えにくい
- 大阪市内で犬に噛まれたら、区への届け出も
- 🔸 よくある質問
- Q. 犬や猫に噛まれたら、何科に行けばいいですか?
- Q. 血は出ていないのですが、受診したほうがいいですか?
- Q. 猫にひっかかれた傷が治ったあとに、脇や首が腫れてきました
- Q. 病院に行くべきか迷ったら、誰に相談できますか?
- 🔸 まとめ|傷の大きさより「動物の種類と場所」で判断
🔸 消毒より先に、流水と石けんで洗いましょう
噛まれた直後は、次の3つの手順で対応しましょう。
① 石けんと流水で、傷の奥まで流すようしっかりに洗う(WHOの目安は15分)
② 血が出ていれば、清潔なガーゼやタオルで押さえて止める
③ 清潔なガーゼや絆創膏で傷を覆う
消毒液を使うこともありますが、それだけで傷の奥まで洗いきるのは難しく、残った菌で数時間〜数日後に腫れてくることがあります。消毒はあくまで洗ったあとに行うもので、洗浄の代わりにはなりません。

血が出た傷は、皮膚が破れて、菌が入り込んでいるおそれがあるサインです。傷が浅く見えても、早めの受診をおすすめします。
🔸 猫の噛み傷は、小さく見えても要注意
猫に噛まれた場合は深い傷になりやすく、感染に注意が必要です。
穴が小さくても、中は深い
猫の歯は細くとがっているため、注射針のように皮膚の奥まで刺さります。表面の穴はすぐにふさがり、奥に菌が閉じ込められやすいのが特徴です。

血が出たら当日中、翌日に腫れてきたら迷わず受診
猫の口にいるパスツレラ菌は、感染すると数時間〜24時間ほどで赤み・腫れ・痛みが出てくることが多いと報告されています。「翌日に腫れてきた」は、まさにこの状態です。
英国のガイドライン(NICE)でも、皮膚が破れて血が出た猫の噛み傷には、感染する前に抗生物質(抗菌薬)を出す方針です。また、手や指は皮膚のすぐ下に腱や関節があり、感染が広がると入院や手術が必要になることがあります。血が出たときは当日中に、手や指を噛まれたときは、皮膚に傷がついていれば血が出ていなくても、受診しましょう。
🔸 犬に噛まれたとき|こんな場合は受診を
犬はあごの力が強いぶん、噛まれた傷が深くなることもあります。深さや場所によっては治療が必要です。
次のどれか一つでも当てはまれば、受診してください。
◻︎ 出血が止まらない、傷が深い、皮膚が大きく裂けている
◻︎ 指が動かしにくい、しびれがある
◻︎ 手・指、顔、目の周り、関節の近くを噛まれた (血が出た場合)
◻︎ 赤み・腫れが広がる、膿が出る、熱が出てきた
血がにじまない程度の浅い傷でどれにも当てはまらなければ、洗浄と経過観察で済むこともあります。ただし、数日のうちに赤みや腫れが出てきたら受診しましょう。

🔸 抗生物質(抗菌薬)は「全員」ではなく「必要な人」に
噛まれた方の全員に、抗生物質が必要なわけではありません。感染を防ぐために抗生物質を使うことがあるのは、主に次のような場合です。
傷が深い
手や顔など、感染が広がると影響が大きい場所を噛まれた
猫に噛まれて血が出た
糖尿病の方や、免疫を抑える薬を使っている方
実際に飲むかどうかは、傷の状態や持病をみて医師が判断します。なお、複数の研究をまとめた報告で、抗生物質で感染が減ることが示されたのは、手の噛み傷でした。
抗生物質が必要な場合でも、家に残っている抗生物質を自己判断で飲むのはやめてください。以前ほかの病気でもらった薬は、動物の噛み傷から入る菌には効きにくいことがあるためです。
🔸 破傷風と狂犬病|ワクチンの記憶があいまいな方へ
噛み傷といえば狂犬病を思い浮かべる方が多いかもしれません。でも、国内で実際に問題になるのは破傷風です。
破傷風:最後に打ったのが5年以上前なら相談を
破傷風は、土や動物が持っている破傷風菌が、人の傷口に入り込んで毒素を出すことで、しびれやけいれんを起こす病気です。米国CDCの基準では、噛み傷は「汚れた傷」として扱い、噛まれた方の最後のワクチン接種から5年以上たっていれば追加接種を検討します。
また、日本では1968年より前に生まれた方は、子どもの頃の定期接種に破傷風が含まれていません。基礎免疫がない可能性があるため、該当する方は、受診時に医師に伝えてください。
狂犬病:国内のペットでは通常考えにくい
狂犬病は、狂犬病ウイルスを持つ哺乳動物(犬、コウモリ、キツネなど)に咬まれたり傷を舐められたりすることで感染する、致死性の高い感染症です。日本では、人は1956年、動物は1957年の猫を最後に狂犬病の発生がないと、厚生労働省が公表しています。
ただし海外は別です。狂犬病は今も南極を除くすべての大陸で発生していて、発症するとほぼ確実に命に関わるとWHOは注意を呼びかけています。海外で動物に噛まれたら、石けんと水で洗ったうえで、現地ですぐに医療機関を受診してください。
大阪市内で犬に噛まれたら、区への届け出も
大阪市では、犬に噛まれた場合、医療機関での処置とは別に、お住まいの区の保健福祉センターへ届け出ましょう。噛んだ犬は、狂犬病の鑑定を受ける対象です。
🔸 よくある質問
Q. 犬や猫に噛まれたら、何科に行けばいいですか?
A. 内科・外科・皮膚科で対応できます。当院(内科)でも日中は対応しています。指が動かない、顔の深い傷といった場合は整形外科・形成外科へ、夜間は救急を受診してください。
Q. 血は出ていないのですが、受診したほうがいいですか?
A. 皮膚が破れていなければ、洗浄と経過観察で済むことが多いとされています。ただし、猫の噛み傷で深そうなときや、赤み・腫れが出てきたときは受診しましょう。
Q. 猫にひっかかれた傷が治ったあとに、脇や首が腫れてきました
A. 「猫ひっかき病」の可能性があります。ひっかかれてから1〜3週間ほどして、傷に近いリンパ節が痛みを伴って腫れることがあります。多くは自然に治りますが、猫との接触を伝えて受診しましょう。
Q. 病院に行くべきか迷ったら、誰に相談できますか?
A. 大阪府にお住まいであれば、#7119で救急安心センターおおさかに繋がり、看護師などが24時間365日相談に応じています。大阪府以外の方も、#7119でお近くの救急相談窓口に繋がります。ただし、出血が止まらない・指が動かない・腫れが広がるときは、相談より受診が先です。
🔸 まとめ|傷の大きさより「動物の種類と場所」で判断
「消毒はしたけれど、洗っていない」「猫の小さな噛み傷を、数日様子見していた」こうしたご相談は、診察室でも少なくありません。
✅️ 噛まれたら、まず流水と石けんで洗う
✅️ 猫に噛まれたときと、手や指を噛まれたときは、小さく見えても早めに受診する
この2つを押さえておくと、迷いにくくなります。抗生物質や破傷風ワクチンが必要かどうかは、傷を見た医師に任せて大丈夫です。
当院では、傷の洗浄・処置、抗生物質の要否の判断、破傷風ワクチンのご相談に対応しています。「病院に行くほどかな」と迷っている方は、お気軽にご相談くださいね。
みなさんが元気で、ご機嫌な毎日を過ごせるよう、お手伝いします。
それでは、次回のコラムもお楽しみに!
【参考文献】
Rabies fact sheet(世界保健機関/WHO)
Human and animal bites: antimicrobial prescribing NG184 2020(英国国立医療技術評価機構/NICE)
Antibiotic prophylaxis for mammalian bites 2001(コクラン・レビュー)
Dog and Cat Bites 2014(米国家庭医学会/AAFP)
Clinical Guidance for Wound Management to Prevent Tetanus(米国疾病予防管理センター/CDC)
About Cat Scratch Disease(米国疾病予防管理センター/CDC)
狂犬病に関するQ&A(厚生労働省)
破傷風について(千葉市)
野犬・放浪犬・放し飼い犬等への対応(大阪市)
救急安心センターおおさか #7119(大阪市消防局)
Cat bite infections of the hand: assessment of morbidity and predictors of severe infection 2014(Journal of Hand Surgery)