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健康習慣
「病院に行って」では動かない?病院に行かない家族への声のかけ方

こんにちは!リベ大総合クリニック大阪院 院長の大岩です。
🌀 健診で受診を勧められたのに、夫が病院に行かない
🌀 親に受診を勧めると、いつも言い合いになってしまう
🌀 このまま放置して、手遅れにならないか心配
こんなお悩みをお持ちではありませんか?
大切な家族だからこそ、心配でつい強く言ってしまうこともありますよね。
当院でも、「家族が健診結果を放置している」「親が受診をいやがる」といったご相談を、ご家族からいただくことがあります。強く言うほど本人がかたくなになり、話がこじれてしまうこともあるようです。
そこで今回のコラムでは、病院に行きたがらない大人の家族への声のかけ方と、本人の気持ちを待たずに助けを求めるべき場面についてお話しします。ぜひ最後までご覧ください!
🔸 なぜ、病院に行きたがらない?

病院に行かない背景には、気持ちや医療費、時間の都合など、さまざまな理由が考えられます。たとえば、次のようなものです。
病気が見つかるのが怖い
検査が怖い
医療費が心配
症状がないので、必要だと思えない
仕事を休めない
さらに、受診したほうがいいと分かっていながら、今は行きたくないとも感じている場合があります。こうした相反する気持ちは、何かを変えようとするときに誰にでも生じる自然なもので、心理学では「両価性」と呼ばれています。
病院に行きたがらないのは、頑固だからではなく、怖さや負担との間で迷っているからかもしれません。言い訳だと決めつけないことが大切です。
🔸 強く勧めると、かえって行きにくくなる?
心配が大きいほど、つい強い言葉で受診を勧めたくなるものです。
ただ「絶対に病院へ行って」と迫られると、本人は話の中身よりも、自分で決めさせてもらえないことに反発する場合があります。自由を奪われたと感じたときに起こるこの反応は、心理学で「心理的リアクタンス」と呼ばれています。
家族の受診に限った話ではありませんが、伝え方の影響を調べた研究があります。その研究では、選択の自由を脅かす強い表現は、穏やかな表現に比べて、怒りや否定的な考えを引き起こしやすいという結果でした。
では、なぜつい強く言ってしまうのでしょうか。
その背景には「正したい反射」と呼ばれる反応があります。相手を大切に思うからこそ、すぐに正解を教えて、正しい方向へ導きたくなる気持ちのことです。
たとえば、忙しいと言う相手に「土曜に行けばいい」と返し続けると、相手は行けない理由を説明する側に回りがちです。
だからといって、黙って見守るしかないわけではありません。正しい情報も、伝える順番を工夫すれば届きやすくなります。
🔸 受診を嫌がる家族への声のかけ方
家族が受診を勧めるときに大切なのは、先に本人の気持ちを聞き、伝えたいことはそのあとに回すことです。ここでは、相手の迷いに寄りそいながら話を聞く「動機づけ面接」という方法を参考に、5つのステップで紹介します。
もとは医療者が使う会話の方法なので、家庭で同じ効果が出るとは限りません。必ず受診につながる方法というより、本人が気持ちを整理する手助けとして取り入れてみてください。

ステップ① 話してよいか尋ねる
いきなり本題に入らず、まずは「この前のこと、今少し話してもいい?」と声をかけます。話すかどうか、いつ話すかを本人が選べるようにするためです。
断られたら、急ぎでなければ別の日に話せないか相談しましょう。返事を待たずに話し始めてしまうと、せっかく尋ねた意味がなくなってしまいます。
ステップ② 本人の考えを聞く
次に「今回の状況、自分ではどう思っている?」と、本人の受け止め方を聞きます。
なぜ病院に行かないのかと問い詰めたり、質問を重ねたりせず、答えを待ちましょう。受診すると言わせるためではなく、本人の考えを知るための質問です。
ステップ③ 聞いたことを言葉にして返す
答えを聞いたら、すぐに解決策を出さず、聞いた内容を言葉にして返します。
本人:「仕事が忙しくて、病院に行く暇がない」
家族:「仕事が忙しくて、時間をつくるのが難しいんだね」
このとき、本人が言っていない気持ちまで決めつけないよう気をつけましょう。受け取り方がずれていたら、聞き直せば大丈夫です。
病院に行かないことに同意する必要はありません。受診をためらう事情を、いったん受け止めるためのものです。
ステップ④ 受診する理由を聞く
気持ちが少しほぐれてきたら、「少し気になっていることはある?」と、本人なりの受診する理由に目を向けます。
答えにくそうなら、受診したほうがいいと思う気持ちを0〜10の数字で聞く方法もあります。0はまったく思わない、10は強く思う、という目安です。
たとえば4と答えたら、「どうして0ではなく4なの?」と尋ねます。高い数字を求めるのではなく、本人の中にすでにある気がかりを聞くためです。0と答えても責めず、理由を無理に言わせないようにします。
ステップ⑤ 小さな一歩を選ぶ
伝えたいことがあるときも、「心配していることを、一つ伝えてもいい?」と先に確認します。再検査を勧められている、気になる症状が続いているなど、伝えたい内容は短くまとめて、「どう思った?」と受け止め方を聞きましょう。
そのうえで、本人が取り組めそうな一歩を一緒に考えます。たとえば、次のような小さなことから始めてみましょう。
✅ 気になる症状や健診結果を、スマホにメモしておく
✅ 受診先の病院を一緒に探す
✅ 診療時間を一緒に調べる
✅ 予約だけ一緒にする
一度で予定まで決めようとせず、本人が自分の状況を考えられただけでも、最初の会話としては十分です。
ここまで読んで、手間がかかると感じた方もいるかもしれません。毎回すべてをこなす必要はないので、できそうなステップから試してみるだけでもかまいません。
ただし、体調や健診結果によっては、本人の気持ちが固まるまで待てない場合もあります。
🔸 本人の意思を待てないとき
本人の気持ちを大切にすることと、危険な状態を見過ごすことは別です。次のような症状があるときは、説得を続けず、すぐに119番へ連絡しましょう。

救急車を呼ぶか迷うときは、大阪なら「#7119(救急安心センターおおさか)」に24時間相談できます。
自殺の危険が差し迫っているときも、ためらわず119番や110番に助けを求めます。暴力や飲酒運転、子どもへの危害など、身の危険がある場面では、まず自分や周りの人の安全を確保してから110番へ通報しましょう。
🔸 まとめ|家族だけで抱え込まない
今回は、病院に行きたがらない家族への声のかけ方についてお話ししました。
受診を強く勧めたくなったときこそ、まずは本人がためらう理由に耳を傾けてみましょう。気持ちを受け止めてから必要な情報を伝え、できそうな一歩を一緒に探すことが大切です。
とはいえ、大人の家族の健康を、周りがすべて管理することはできません。すぐに受診につながらなくても、ご自身の伝え方を責めなくて大丈夫です。
特に、依存症や摂食障害、精神疾患、認知症などが関係する場合は、会話だけで解決しようとせず、医療機関や地域の相談窓口を頼りましょう。大阪市では、各区の保健福祉センターなどで相談できます。家族だけで抱え込まないことが、結果的に本人を支える近道になります。
受診を急いだほうがよいか迷うときは、ご家族だけでもお気軽に当院へご相談ください。
▶︎ 【大阪市西大橋駅徒歩すぐ】ご相談・ネット予約はこちらから
少しでも参考にしていただければうれしいです。
では、次回のコラムもお楽しみに!
【参考文献】
Substance Abuse and Mental Health Services Administration. Enhancing Motivation for Change in Substance Use Disorder Treatment. Treatment Improvement Protocol Series No. 35. 2019. Chapter 3.
Li Z, Shi J. Message effects on psychological reactance: meta-analyses. Human Communication Research. 2026;52(1):38–52.
厚生労働省. こんな時は迷わず119へ.
消防庁. 救急車を上手に使いましょう. 2025. p.3.