公開日
2026.5.29
更新日
2026.5.29
総合診療
その動悸、甲状腺が原因かも?甲状腺機能亢進症の検査と治療【後編】

こんにちは!リベ大総合クリニック大阪院 院長の大岩です。
🌀 安静にしているのにドキドキする
🌀 脈が速くなったり、リズムが乱れる気がする
動悸が続くと「これは何かの病気かな」と心配になりますよね。原因がストレスなのか、心臓の病気なのか、それとも別の何かなのか。はっきり分からないまま過ごしている方も多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは、主な動悸の原因を整理したうえで、その原因の一つである「甲状腺機能亢進症」の検査や治療についてお話しします。
🔸 動悸の原因はさまざま
動悸とは、自分の心臓の鼓動を不快に感じる症状のことです。
動悸の原因は、心臓の問題だけでなく、ストレス、貧血、更年期など、多岐にわたります。

動悸の原因のうち、特に見落とされやすいのが、甲状腺の働きが活発になりすぎる「甲状腺機能亢進症」です。甲状腺機能亢進症は、動悸に加えて、汗が増えた・体重が減った・暑がりになった、といった症状がある場合に疑われます。
詳しい症状については、前回のコラムで解説しています。気になる方は、あわせてご覧ください。
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🔸 甲状腺機能亢進症を放置しないで
甲状腺機能亢進症は、脳梗塞や心不全といった、危険な病気の原因となる「心房細動」とも深く関わっていることがわかっています。
心房細動とは、心臓の上の部屋(=心房)が不規則にふるえて、脈が乱れてしまう「不整脈」の一つです。動悸として自覚されることもあれば、自覚症状がなく健康診断の心電図ではじめて指摘される方もいらっしゃいます。
心房細動は、甲状腺機能亢進症の方のうち最大15%にみられると報告されています。一般人口での心房細動の有病率が約4%とされていることを踏まえると、甲状腺機能亢進症の方は心房細動を起こしやすくなることがわかります。
また、デンマークの大規模研究では「潜在性甲状腺機能亢進症」といった、ホルモン値の異常がまだ軽い段階でも、心房細動のリスクは約1.4倍に上がると報告されています。
心房細動が見つかったら甲状腺のチェックを
🌀「甲状腺機能亢進症、怖すぎる!」
そう思ったかもしれませんが、嬉しいことに、甲状腺機能亢進症が原因の心房細動は、甲状腺の治療によって自然に消失するケースも少なくないことも報告されています。
ヨーロッパ心臓病学会(ESC)の心房細動ガイドラインでは、新規に心房細動と診断されたすべての方にTSH(甲状腺刺激ホルモン)の測定が推奨されています。
つまり「動悸がする」→「心電図で心房細動が見つかった」→「甲状腺を調べたら甲状腺機能亢進症だった」というルートで、隠れていた病気が発見されることもあるということです。

🔸 甲状腺機能亢進症の検査
甲状腺の検査の基本は、血液検査です。血液検査の結果、甲状腺機能亢進症を疑われる場合は、原因究明のために、ほかの検査も組み合わせて行います。
ここからは、それぞれの検査について、なるべく易しくご説明します。
血液検査
最初にチェックする値は、TSH(甲状腺刺激ホルモン)です。
TSHは脳から分泌されるホルモンで、甲状腺に「もっとホルモンを抑えて!もっとホルモンを出して!」といった指示を出しています。
甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンが多く出すぎている状態なので、TSHが低くなります。
TSHが低い場合は、実際に身体で働いている甲状腺ホルモンである、FT4(遊離サイロキシン)とFT3(遊離トリヨードサイロニン)もチェックします。
TSHとFT4・FT3の状況によって、医師は次のように判断をします。
🔹 TSHが低くて、FT4・FT3が高い → 「顕性甲状腺機能亢進症」
🔹 TSHが低いものの、FT4・FT3は正常 → 「潜在性甲状腺機能亢進症」
顕性甲状腺機能亢進症は、ホルモン値の異常がはっきり出ている段階です。一方、潜在性甲状腺機能亢進症は、ホルモン値の異常がまだ軽い段階を意味します。
原因を見極めるための検査
甲状腺機能亢進症だと分かったら、次は「何が原因で起きているのか」を調べていきます。
甲状腺機能亢進症の多くは、バセドウ病が原因です。そこでまず行うのが、バセドウ病かどうかを見分けるためのTRAb(TSH受容体抗体)という血液検査です。
TRAbはバセドウ病に特有の抗体で、これが陽性であればバセドウ病の可能性が高くなります。
甲状腺機能亢進症は他にも、甲状腺の一部にできたしこりや、甲状腺の炎症なども原因となります。血液検査だけでなく、超音波や甲状腺シンチグラフィといった検査も行い、原因を見極めていきます。
🔸 甲状腺機能亢進症の治療法

甲状腺機能亢進症の治療法は、飲み薬による治療・放射性ヨウ素による治療・手術による治療の大きく3つです。
ホルモン値の異常がまだ軽い「潜在性甲状腺機能亢進症」であっても、65歳以上の方やTSHが0.1 mIU/L未満とかなり低い場合は、心房細動や骨粗鬆症のリスクを考えて治療を検討することが推奨されています。
① 飲み薬による治療
飲み薬による治療は、日本で最も一般的な治療法です。メルカゾール(一般名:チアマゾール)など、甲状腺でのホルモン合成を抑える薬を、通常12〜18ヶ月ほど内服します。
白血球の一部が極端に減ったり、肝臓の機能に障害が出たりする副作用があるため、治療開始から3ヶ月間は、定期的な血液検査を行い、しっかりフォローをしていきます。
② 放射性ヨウ素による治療(アイソトープ治療)
放射性ヨウ素を飲むことで、甲状腺の細胞を内側から縮小させる治療方法です。
「放射線」と聞いて怖いイメージを持たれるかもしれませんが、80年以上の歴史がある治療法で、安全性は高いとされています。
治療後に甲状腺機能低下症になる方が多いため、その場合はレボチロキシン(商品名:チラーヂンS)という飲み薬を使います。
③ 手術による治療
甲状腺がとても大きい方、眼症状が重い方、腫瘍が疑われる方には、甲状腺を手術で取り除く方法が選ばれることがあります。手術をした場合は、甲状腺ホルモンの補充が一生必要です。
どの治療方法を選ぶかは、年齢・甲状腺の大きさ・眼症状の有無・妊娠の希望・合併症・ご本人の希望などを総合して決めていきます。なお、どの治療法でも、動悸やふるえといった症状を和らげるために「β遮断薬」という薬が併用されることが多くあります。
🔸 まとめ|動悸が続くなら甲状腺の検査を
今回のコラムでは、動悸の原因として見落とされやすい「甲状腺機能亢進症」についてお話ししました。
動悸の裏には、甲状腺の問題が隠れているかもしれないことを、ぜひ頭の片隅に置いていただけたらと思います。
🌀 動悸が続いていて原因がはっきりしない
🌀 動悸に加えて、汗・体重減少・暑がりなどがある
🌀 健康診断で心房細動を指摘されて、甲状腺が気になる
そんなときは、お気軽にご相談ください。
リベ大総合クリニック大阪院では、甲状腺ホルモン検査(TSH・FT3・FT4)や抗体検査(TRAb・TPOAb)を含む、内分泌疾患の診療に対応しています。
少しでも参考にしていただければうれしいです。 では、次回のコラムもお楽しみに!
【参考文献】
国立循環器病研究センター. 不整脈. 病気について知る.
日本循環器学会/日本不整脈心電学会. 2022年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン. 2022.
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日本甲状腺学会. バセドウ病治療ガイドライン2019.